「あら、今日はもう帰るの?」
「い、いやどうしようか迷ってたんだ。」

その再開はあまりに突然だったから、しどろもどろして、こんなことしか言えなかったのである。

「じゃ、また一緒に打たない?実は昨日が初めてだったんだけど、ビギナーズラックなんだろうなって思いながら、味しめちゃって!」
「そんなに甘くないと思うよ。」
「それじゃ、またご教授くださいよ♪」

こうして、この日また一緒に打つことになったのである。
結果は覚えていない。おそらくちょぼちょぼだったと思う。私にとってそんな結果はもうどうでもいい事だった。

彼女と一緒に打つことで、すごく楽しい一時が過ごせた。それだけが私にとっては不思議でもあり、なんともいえない心の変化になってるのを自分で理解していることが、自分でも驚きだったのであった。

二人はその日、スロット終わりに食事に向かった。彼女が誘ったのだ。

『ウソばっかり!宇宙から誘ったんじゃない!』
「え~?結女からじゃないか!」

そう頭の中でつぶやく。その辺の記憶はあいまいなのだろう。きっと。一緒に食事が出来るその嬉しさで、頭がいっぱいいっぱいだったのは間違いなかった。

男友達と、パチンコや麻雀なんかで勝ったり負けたりで、うだうだ話しながら飯食ったり、コンパで騒いだりしてるときなどは、アドレナリンが噴出して、喋り捲ってる半面、楽しくなかったといえばウソになるが、ドキドキしたかといえばそんなことはなかった。

今は、こんな居酒屋みたいなところだけど、こうして彼女といる時間は、嬉しさの中にどことなく心が落ち着く感覚があるのであった。
しかし、同時に何を話していいのかわからなかったりしてる自分が情けなかった。