その日、結女は結局好調で、散々ボーナスを止めさせられたが、私は散々な結果だった。

その日は特に結女とし親しくなるでもなかった。負けてしまったので、すごすご帰ってきたのだ。

こんな日はたいてい虚しい気持ちになるので、普段はすぐに寝るか、ビデオでも見て(当時はDVDなどなかった)気持ちを紛らすのだが、妙に心が晴れやかだったのを覚えている。

別に特にすることのない毎日、次の日も『することもない』という理由で、昨日のパチンコ屋に向かうのであった。

『じゃなんで、色々あるパチンコ屋の中で、昨日と全く同じパチンコ屋に向かったの?』

頭の中でつぶやく結女は、なかなか鋭いところをついてきやがる。

「別に特に理由なんてね~よ。」

そうつぶやいて、少しアクセルを吹かしてみる。

結女が気になっていた。そうなのかもしれない。
少し違う毎日になる。無意識にそんな気になってたのかもしれない。どちらにせよ、頭の中の結女に見透かされたような気がして、少し恥ずかしい気持ちになったので、車のアクセル音でその気持ちを紛らわせてみたのである。

しかし、残念なことにパチンコ屋に彼女はいなかった。この前、彼女はただの暇つぶしに来たのかもしれない。
例えば、このパチンコ屋に他の男に連れられて…

そんなことを考えると、なんともやるせない気持ちと、空虚感に包まれた。
なんともバカらしくなって、帰ろうと外に出た。

スロットなんて打つ気にもならなかった。
自動ドアの前に立って、扉が開いたその目の前に…
彼女は立っていた。