「いや、店で違う人のを勝手に打っちゃいけないって決まっているから…」
私はそう答えた。
今では全くそんなことはないが、当時は確かにそう決められていた。
しかし、そんなことは誰でもしてもらっていたし、店員がそれを見たからといって、別段注意するわけでもない。
怒りからそんなことを言った、というよりは、やはり人とのかかわりを避けたかったのと、急にそんなことを言ってきた彼女に、少し気恥ずかしさを感じたのである。
「はぁ、そうですか。じゃ、がんっばってみます。」
そう言った彼女は、一生懸命がんばって止めようとしている。流れるリールを目で一生懸命追いながら、一生懸命タイミングを追っていた。
で、意を決してボタンを押すも、ボーナスはそろわない。
そんなことにも一生懸命になっている姿が、どことなく滑稽で、かわいらしかった。
下皿(スロットのコインを入れる場所)にコインもなくなり、ラストのコインを入れて、止めようとする彼女。
左と真ん中には、『7』がそろっている。
残る右のリールに一生懸命『7』を狙って、右手の人差し指を差し出し、いまかいまかと右指を出している。
パチッ!
自分でも驚いたが、驚くほど自然に彼女の右リールを押している自分がいた。ふと彼女と目があった。
しかし、恥ずかしかったので、すぐに視線をはずす自分が恥ずかしく、情けなかった。
「あれ?押したらダメなんじゃなかったの?」
いたずらっぽく言う彼女がかわいかった。
「そういう時は普通ありがとうって言うんだよ。」
「え~、でも私あそこまで押せたら、最後も自分で止めたかったのにな~。」
そう言って、彼女は席を立ったのでした。
どこに行くのか知らない彼女の後姿を見て、少し寂しい気持ちがしたのを覚えている。
『なんだ、そんなことあの時思ってたんだ。』
頭の中の結女が話しかけてきた。
「そうだよ、なんか妙にむなしかったんだよ。横で流れてくるボーナス音がさ…」
私は車を走らせながら、独り言のようにつぶやいた―
私はそう答えた。
今では全くそんなことはないが、当時は確かにそう決められていた。
しかし、そんなことは誰でもしてもらっていたし、店員がそれを見たからといって、別段注意するわけでもない。
怒りからそんなことを言った、というよりは、やはり人とのかかわりを避けたかったのと、急にそんなことを言ってきた彼女に、少し気恥ずかしさを感じたのである。
「はぁ、そうですか。じゃ、がんっばってみます。」
そう言った彼女は、一生懸命がんばって止めようとしている。流れるリールを目で一生懸命追いながら、一生懸命タイミングを追っていた。
で、意を決してボタンを押すも、ボーナスはそろわない。
そんなことにも一生懸命になっている姿が、どことなく滑稽で、かわいらしかった。
下皿(スロットのコインを入れる場所)にコインもなくなり、ラストのコインを入れて、止めようとする彼女。
左と真ん中には、『7』がそろっている。
残る右のリールに一生懸命『7』を狙って、右手の人差し指を差し出し、いまかいまかと右指を出している。
パチッ!
自分でも驚いたが、驚くほど自然に彼女の右リールを押している自分がいた。ふと彼女と目があった。
しかし、恥ずかしかったので、すぐに視線をはずす自分が恥ずかしく、情けなかった。
「あれ?押したらダメなんじゃなかったの?」
いたずらっぽく言う彼女がかわいかった。
「そういう時は普通ありがとうって言うんだよ。」
「え~、でも私あそこまで押せたら、最後も自分で止めたかったのにな~。」
そう言って、彼女は席を立ったのでした。
どこに行くのか知らない彼女の後姿を見て、少し寂しい気持ちがしたのを覚えている。
『なんだ、そんなことあの時思ってたんだ。』
頭の中の結女が話しかけてきた。
「そうだよ、なんか妙にむなしかったんだよ。横で流れてくるボーナス音がさ…」
私は車を走らせながら、独り言のようにつぶやいた―
