先生は白衣のまま私に駆け寄ってきた。

「杉本先生…。」

先生は寒いね、と笑いながら両手を白衣のポケットにつっこむ。

先日ふった相手に話しかけるなんて無頓着もいいところだ、と心の中で思いながら寒いですね、と返す。

先生は右のポケットからスマホを取り出して恥ずかしそうにはにかんだ。

「この前、連絡先交換できなかったので次会えた時にと思って最近はちゃんと毎日持ち歩いてたんです。」

顔が熱くなった。

本当に忘れていただけだったという安堵の気持ちとわざわざ連絡先を交換するために私を呼び止めてくれた嬉しさで心がいっぱいになって泣きそうになるのをこらえた。