儚いあなたと

「先生、連絡先教えてくれませんか。」

「えっ」

「えっ」

自分で言っておいて驚いた。

本心を勢いでほろりと言ってしまった。

先生の顔がすこし赤くなって、ハッとしたように言う。

「すみません、それが今日に限って持ってないんです。ああ。惜しいことしたなあ。」

「ああ…。それは残念です。すみません突然。」

きっと先生なりに私を傷つけないようにやんわり断ってくれたんだ。

先生はまたお見舞いに来てね、と告げて少し気まずそうに病院に帰っていった。