儚いあなたと

「あ、杉本先生…。」

一階のフロアで杉本先生は患者さんと話していた。

久しぶりに見た先生はやっぱりかっこよくてこのままずっと見ていたいと思った。

私に気付いた先生はにっこり笑って、今帰りかと聞いた。

「そうです。もう少しいたかったんですけど傘持ってなくて。」

「え、大丈夫ですか?僕傘あるので送って行きますよ。」

ドキッと胸が高鳴る。

嬉しさと恥ずかしさで俯いた。

「さすがに白衣じゃまずいんで、すぐ着替えて来ます!」

先生が小走りで立ち去ろうとする。

「だ、大丈夫です!帰れます!」

送ってもらいたい気持ちはやまやまなのだが申し訳なさで反射的に断ってしまう。

「大丈夫ですから。遠慮しないでください。」

先生は聴診器を首から外しながら笑顔を向ける。

ああ。

この人が好きだなあと思った。