空side







太陽「何でなんもくれーの」






帰りを見送るために外に出たとき、行きなり手を引かれて
結局、海岸まで無言で来ていた。


太陽は無言のまま防波堤に座って、真面目な顔でそう言う。


何でって、、







空「だから、何もなかったって言ってんじゃん」







段々夏に近づいて、昼間は過ごしやすい気温のこの時期でも
夜はまだ少し肌寒い。

だから早く帰りたいな、が本音。



でもそんな私に気を使うわけでもなく
太陽は話を続けた。







太陽「俺の願い叶えるって言ったじゃん」






俺の、願い。

そんなこといきなり言われても...

てか言った覚えがない。
太陽、夢でも見たんじゃないの?



なにそれ、そう言えば
太陽は





太陽「海は叶えてくれたし。唐揚げ」






そう答えた。

...唐揚げ、


あ、、






___『じゃー、俺の願い叶えて?』






そう言えば前に言ってたっけ...?

いや、ちょっと待ってよ






空「まじだったの」






いつも冗談で言うこともあるし、てか海が叶えたから願いは叶ったんじゃないの?

そう言えば、







太陽「叶ってねぇよ」







そう、何時にもまして真面目な声だして...

もしかして、、怒ってる?







太陽「俺の願い叶えてよ」



空「...願いって?」






ずっと海の方を見ていた太陽の目が
私を捕らえた。

太陽は狼。

真剣な顔した太陽の目は、例えるとそう見えてくる。

獲物を捕らえた狼のような目。






空「太陽?」






でもその狼は、なにも言わずに下を向いた。







太陽「お前は?願い。あんの」







そしてやっと出した声は、私に対しての質問で
まだ顔は下がっていて見えない。


その太陽が心配で
なにも言えずにいた私に、太陽がまた『なぁ、』って声をかけてくる。

...もう、なんなの






空「無いよ。願いなんか」



太陽「嘘つけ」



空「はぁ?」






私は思ってることを言ってるだけ。
太陽が言えっていったんじゃん。

なのに...

なのに太陽は、ニヤッと笑って
下を向いていた顔を上げた。

その顔は近くて、、






太陽「待ってんだろ?ずっと」






そう、鼻が触れそうな距離でまた真面目な顔で言う。

...なんで、

なんで、







太陽「...隣に居ろよ」








『それが俺の願い』

そう続けた。


太陽は何を言ってるの
傍にいろって、






太陽「破ったらお仕置きな?」







ほらまた、ニヤッて挑発するように笑う。

それが本心なのか何なのか、

今の私には分からない。



でも、

その願いは








空「ずっと一緒じゃん。陸も海も」






願う必要もないよ。

これからもずっと、みんなで一緒に居ようよ







太陽「あー、、お前は馬鹿か?」



空「は、」



太陽「約束破んじゃねぇぞ」









何故か

何故かこの春、








太陽「ほら帰るぞー」









なにかが少しづつ

変わるような気がした。














___この時、あの"事件"まで


あと4か月___