「大翔は今好きな人とかいるの?」

中学の時から周りからの情報で
栞の気持ちは知っていた。

「いや…。
好きな人はいない。
だけど気になる人はいる。」

思わせぶりなこと言っても面倒だし
正直別れてもなお未練がましい
栞にはうんざりしていた。
別れた理由は栞の心変わりだったから。

「そっかぁ…
大翔は優しいからね。
すぐ彼女できるだろうなぁ…
うち今年のバレンタインの後すぐ
彼氏と別れちゃって…へへっ」

中学や高校の噂の広がる早さは
尋常じゃないほど早い。
実際栞が彼氏と別れたことは
噂に聞いて知っていた。

「へぇ。そーなんだ。
けっこうお似合いだったけどね。
別れちゃったんだ…
まぁお前ならまたすぐ見つかるよ。」

そう言いながら俺は立ち上がり
栞には見向きもせず
道路に出るため坂を登った。

「まだ好きなのっ…。
大翔と別れて他の人と付き合っても
やっぱり大翔じゃなきゃだめだった…っ
自分が悪いってわかってる……」

栞は泣くのを堪えながら必死に話す。
だけど俺は振り返ることもせず
止めようとする栞を振り切るように
足早に家へと急いだ。