カナリアは再度タブレットを出し、索敵に入る。
――チュートリアルを再開します。スキル「索敵」使用しました。スキルが上昇しました。クエストを続けます――
 スキル「索敵」を使用しているが、全く捕まらない。おもむろにタブレットに目をやると黄色いアイコンが光っていた。
「セバスチャン」
「ミ・レディ。どういたしました?」
「この黄色いアイコンはなんですか?」
「Mobと呼ばれるモンスターです。これに気がついていないということは、ミ・レディの敵索能力はタブレット以下だということです」
 あっさりと痛いところをついてきた。
「それに出てくるって事は、平均して十秒くらいでこちらに来る。構えてろ!」
 ジャッジの言葉にスマホを大剣にしていく。
「カナリア。これはお前のクエストだ。お前がウォールベアを三体倒さないことには終わらないぞ。ちなみに今回は一体しか来ていない」
 岩場からいきなりモンスターが出てきた。先ほども見た二足歩行の熊だ。
「あんまり言いたくないが、一撃加えたらすぐに後ろに下がったりして回避しろ」
「はいっ」
「リース」
「カナリア様には防御力UP、攻撃力UP等の魔法はかけてあります。回復の準備は整ってます」
「じゃあ、あとは思いっきり行け! 装備が弱いから尚更回避に重点を置け」
 そこでジャッジの説明は終わった。後は馴れろということらしい。

 カナリアが一撃加えて熊を見て、さがるタイミングを見計らう。
「ミ……」
「セバス、お前は黙ってろ」
 カナリアの回避が遅れ、左腕が抉られた。その痛みに大剣を落としそうになる。
「回復しました。早く!」
 もう一度一撃を加え、今度はすぐに下がった。それでは早すぎるらしい。
 攻撃のタイミングを見計らうというのがもの凄く難しいということが分かった。
 その間もタブレットはどんなスキルを使ったのかを事細かく言っていく。
 何度も回復魔法と補助魔法をかけられ、やっと一体と対峙しているのが現状だ。
「はぁぁぁ!!」
 何度目かの攻撃で熊が弱ったのに、カナリアは気がついた。とどめとばかに、渾身の一撃を加える。
「馬鹿っ! すぐに回避しろ!!」
 ジャッジが珍しく叫んできた。

 大剣が刺さったまま、熊がこちらに攻撃を仕掛けてきたのだ。

 次の瞬間、セバスチャンが動いた。カナリアを庇い、炎の魔法を使う。
 それでやっと熊が倒れた。

「ミ・レディ!!」
 セバスチャンの慌てた声を聞きながら、カナリアはブラックアウトした。