微笑んだと言う言葉は間違っているかもしれない。 口元は上がっているが、どこか冷たい微笑み。 目を合わすと動けなくなってしまうような“微笑み”とは不釣合いの冷たい瞳。 私はそんな不気味な微笑よりも、男が出した声に身震いがした。 太くて低い声。 酒やけなんだかガラガラにかすれている。 それなのに透き通ったその声は私の耳を通り越して、脳に響いた。 私という存在すべてに響き渡った気がした。