現実逃避をするためにお母さん達から目を逸らして窓の向こうを眺めると一人の少年が目に写った。
けれど、どこか浮世離れをした少年。その少年と目が合った私の口からは感嘆な声が漏れていた。

「一葉…?」
「あ、ううん。何でもない」
「母さんたち今日は帰るけど、何かあったら看護師さん達をちゃんと呼ぶのよ」
「うん、分かってる」
「何かあれば父さん達も駆け付けるからな」
「うん、有難う」

名残惜しそうに病室を後にする両親に手を振って見送るともう一度窓の外を眺める。けれどあの少年は…

「やあ」

いる!!
いやいや、待って?!待って、待って!!ここ、4階!え?窓の外に笑顔で居る?おかしいよね?!おかしいじゃん!2階ならまだギリギリ許せるけど4階は人間が登れるの?!え、登れないよね?!夢?夢なのかな?!今日あった事全部、ぜーんぶ夢なのかな!?

「中に入っても良いかな?」
「……」

いや、無理でしょ。単なるホラーでしか無いよ。これ確実に幽霊とかそんな類いでしょ、病院だし。偏見だけど病院だから。怖いよ、普通に!面会時間もとうに過ぎてるって言ってたし、無理、ムリムリ!

私は考えを放棄して眠ることにした。
私の意識が無くなるまで窓をコンコン叩く音がいつまでも響いていた。