パシャリ。辺りに響いたシャッター音の後に彼女の可愛い小さな笑い声が聞こえる。
「いいの撮れた?」
「うん!見て」
仕事終わりに時間ができ、予定にはなかったデートの行き先はライトアップされた公園での花見だった。
嬉しそうな彼女の手の中にあるスマホを覗き込めば、満開の桜と三日月がバランスよく配置された写真。
どうやら、彼女はカメラの才能もあるようだ。
「上手く撮れてるじゃん」
「ふふ。なんだか照れちゃうな」
「そんなことない!もっと自信持っていいと思う」
そうかなぁ?と頬を桜色に染める彼女を収めるために、今度はオレがスマホを手に取る番だった。
響いた音の後に画像を確認すれば画面越しでも愛らしさが増して仕方がない彼女がいる。
よし、すぐにバックアップしよう。
「…桜はあっちだよ?」
「?知ってる」
「知ってるなら、桜撮りなよ!せっかく来たんだし」
「えぇ。オレは桜よりもオマエのがいい」
そんな甘ったるい返事に慣れてしまっている彼女は多少照れつつも、今日はお化粧あんまりしてないんだけど…と呟く。
すかさず、リップ似合ってる。新しいの?とフォローすればよくわかったね!と笑顔になる彼女。
「前のも合ってたけど、オレ、そっちの色の方が好き。桜とお揃いだからかな?」
「ふふ。ありがとう。これ、新色で可愛くて買っちゃった」
もう一度似合ってると言い残せば、にこりと笑う彼女が可愛くて再びカメラを起動させる。
そんな思考を知ってかスマホを取り上げた彼女は何処か怒っている時の表情だ。
滅多に怒らない彼女がそんな表情をするとなると焦るのは当たり前で仕事でのポーカーフェイスは消えわかりやすく動揺する。
「もう!私ばかり撮らないで」
小さな子どもを叱る時のような優しい口調でもダメージが大きいのは滅多に怒らない彼女が怒っているからか、そんな彼女の願いを叶えてあげれないことか。
「ごめん、」
「わかったなら良いけど。もう、勝手に撮らないでね。変な顔してるかもだし」
「そんなことない!いつでもオマエ可愛いよ!」
「そこじゃなくて、ちゃんと約束して?」
互いに仕事で忙しい所為でなかなか会えない日々が続くことが多い。
そんな時写真を見れば元気が出るというのに、それを辞めてしまえば仕事には確実に影響が出るだろう。
しかし彼女の可愛い約束を叶えてあげれないオレは最低なのでは…?答えの出ない自問自答に頭が痛くなる。
「うーん、ならさ一緒に写ろう?」
「一緒に…?いいのか!?」
「寧ろ一人よりもそっちの方がいいかな。私にも写真送ってくれるなら撮ろう?」
彼女の可愛いおねだりに愛しさが積もり溢れる。オレはたまらずキスをした。
愛しいオマエに、今日も愛を捧ぐ。

