「あの扉は私が子供の頃からずっとあるの。母は生きているか死んでいるかもわからない。そばにいるのはころころと代わる家政婦かシッター、ボディガードか執事だけ。」




勝手に点滴を抜いた茜の腕を消毒しながら司は茜の話に耳を傾けていた




「母のことを父に聞いたら頬を打たれた。だから聞かなくなったの。この部屋からでるのには父の許可が必要で勝手に出掛けるなんてできない。」





司は茜の膝に毛布をかけた




「父が持ちかけたお見合いで、、、私をひとりの人間として見てくれる人はいないってわかって、、、」




茜は視線を手首にうつした




「、、、」




言葉につまり瞳から大粒の涙が頬をつたって落ちた




あの日の涙を司は思い出した