「笑ってたよ。あんな笑顔は健介を亡くしてから死ぬまで一度も見せなかったなぁ。」



父はそう言って茜を見た。



父の視線を感じても茜は顔をあげることができない。



「信頼していた男に裏切られて、その命を愛する妻が産み、育てる。その命のために自分の命を削る妻を見守り、亡くした私の気持ちがお前にわかるか?」



言葉とは裏腹に父の表情は今までになく穏やかだ。