青空の下で

遠くからこちらを真っ直ぐに見つめたままの岬君を私は目を逸らさずに見つめる。



君をこんな風に目を逸らさずに見つめたのは3年間で初めてだ。



最初で最後になる君との時間。



「呼び出してごめんね」



声が届くだろうと思ったところで私は声を出した。



岬君は足を止めずに「話って?」と口角を上げる。



「聞いて欲しいことがあって……」



遠すぎず近すぎない、そんな距離で岬君は足を止めた。



「先に俺から話してもいい?」



思っていもいない展開に私は一瞬動揺してしまう。



「……あっ。うん」



それでも、必死に冷静を保とうと足に力を入れた。



今日はどんなことがあっても逃げ出したりしない。



「俺……知ってたから」



何の脈略もない岬君の言葉が私の頭に描かれる。



「原田の家の事情知ってたから。前の中学校での事も……知ってた」



その言葉に私は血の気が引いていく。



頭のてっぺんからサーっと冷たくなっていくのを感じながらやっとの思いで声を出した。



「ど、どうして……?」



「サッカー部に原田の地元の奴がいるんだ」



そっか……



あの村からこの高校に入学したのは私だけじゃない。



だから、岬君の耳にあのことが入っても仕方ないよね。