「紗枝ちゃーん、写真撮ろう」
「うん」
「最近急に大人びたって、噂になってるよ」
「そんなことないよ」
そんな風に言われるのは、3年間伸ばし続けた髪のせいかな。
都会の子になりたくて、岬君に大人だって思われたくて、伸ばし始めた髪の毛は結局最後まで切れずにいた。
諦めたと言いながら、私は岬君を諦めてなんかいなかった。
この髪の毛がいい証拠。
蛍の光が流れる校舎で3年間の思い出に浸る。
「紗枝ちゃん、幸子卒業おめでとう」
写真を取り合っていると春樹君が現れた。
「春樹君もおめでとう。岬君呼んで来てくれない?」
「えっ?うん。待ってて」
春樹君は目をパチクリさせながら、来た道を戻っていく。
さっちゃんは私の肩をポンと叩きその場から去っていった。


