私が静止したにもかかわらず、窓から春樹君の姿を見つけると「ウチやっぱり黙っていられない」とさっちゃんは走り出してしまった。



「春樹~」と大きな声で呼びながら、さっちゃんは春樹君に追いついた。



窓から2人の様子を見ていると何だか言い合いをしてるみたい。



そして、数分後にその場所に岬君が現れた。



さっちゃんは岬君の肩を掴んで何かを言っているけれど、春樹君に遮られ2人はどこかへ行ってしまった。



「さっちゃん、ありがとう。もういいよ」



私が窓から身を乗り出し、大きな声で叫ぶとさっちゃんは泣きそうな顔で上を見上げる。



「紗枝ちゃん」



落ち込んだ表情で戻ってきたさっちゃんは「あんな奴忘れちゃいな。最低だよ!!」とご機嫌斜め。



さっちゃんが岬君に何を言われたかはわからない。



なんでさっちゃんがこんなに怒っているのかも。



でも、私はそれを知りたいとは思わなかった。



岬君が何を思っているかなんて臆病者の私には聞けるはずなんてない。



私はいつもよりも重たい足取りで、家へと向かう道のりを歩く。



暑い夏もきっとあと少しで終わりを迎える。



昔は夏が大好きだったのに……



真っ黒く日焼けした肌を冷ますように一気に水中に入る。



あの瞬間がたまらなく好きだったのに……



今は夏になると悔しくて惨めな気持ちばかりが私を飲み込んでいく。