青空の下で

次の日の朝、私は家にいることが出来ないため、朝8時に家を出た。



岬君は確か……15時まで部活をしている。



その姿を見たくて、少しでも岬君の近くにいたくて、自転車を走らせる。



夏の日差しが厳しくて、何度も額の汗を拭った。



学校に着くと、自転車を停め校舎の中へと入っていく。



夏休み中でも部活動はあるし、学校は開放されている。



終業式の日、担任の先生がそう言っていたのを私は聞き逃さなかった。



校舎の中はひんやりとしていて火照った体に心地よい。



ガラガラ



誰もいない美術室で、私の特等席に座り窓の外を眺める。



毎日、こうしていればあっという間に時間が過ぎていく気がする。



憂鬱だった長期休暇も今ならそこまで嫌に感じない。



休み期間中でもチャイムは鳴るんだなとか、今日は風が気持ちいいなとか、私は一人の時間を満喫していた。



いつの間にか時計の針はお昼を差していて、グラウンドにいた部活生は休憩を取り始める。



私は美術室から出て玄関へと向かった。



ずっと校舎の中から外を眺めていると、外の景色があまりにも綺麗で私もその中に行きたくなってしまった。



靴を履き替え、自転車置き場にしゃがみ込んだまま空を見上げると、大きな雲が綺麗に並んでいる。



私はこんな風に空を見上げたのはいつぶりだろう?



きっとあの日から、こんなことにさえも気づかずに生きていた。



両親が離婚したあの日から……



私が幸せであろうと、不幸であろうと、こうして雲は変わらずに私の頭の上を動き続ける。



蝉の鳴き声も、草木の匂いも、ずっと変わっていないはずなのに、私の視覚、聴覚、嗅覚にはまったく入ってこなかった。



私自身が遮っていたのかもしれない。



久々に触れる自然たちは心の中を浄化してくれる。



奥さんと交わした会話の後から、私の中に湧き上がっていたドロドロと流れる汚い感情が少しだけ綺麗になったような気がする。