私は一人でやる事もなく部室へと向かった。
美術室は旧校舎にあるので、学校祭の間は立ち入り禁止。
そのお陰で、人気は何もなく、静まり返っていた。
窓側の席に座り、グラウンドを眺める。
岬君の姿なんてあるはずないけど、私は岬君の姿を探していた。
ボールを追いかける岬君の姿が見たい。
グラウンドを眺めながら、沢山の涙が流れた。
好きだよ。
岬君、私どうしようもないくらい好きになったみたい。
今更、遅いけど、好きすぎて苦しいよ。
岬君を手放したのは私、それなのに離れた後に、欲しくて欲しくてたまらなくなった。
君のこと、好きな気持ち、どうして後になって気付いたんだろう?って何度も後悔しながら泣いたんだ。
でもいくら泣いたって気持ちは変わることなんてなかった。
私は岬君が好きで、ただそれだけは変える事なんて出来なかった。
何時間も泣いているうちに、窓からは綺麗な夕日が差し込んでいる。
この夕日が完全に沈んだ頃、後夜祭が始まるだろう。
その時、君は誰の隣で笑ってる?
私じゃないのは……決まっている。
ガラガラ
部室の扉が突然開いた。
私は咄嗟に机の影に身を隠す。
「紗枝ちゃん?いない?」
この声は……
私は立ち上がりドアのほうに視線を向けた。
「さっちゃん」
「やっぱりここにいた」
笑顔で近づいてくるさっちゃんは机の上に腰掛けた。
私もさっちゃんの隣に腰掛ける。
「そろそろ、後夜祭始まるね」
「そうだね」
さっちゃんは何を言いに私の元に来たのだろう?
出来れば何も聞きたくないのに。


