学園祭初日、教室の前に私たちの作った暖簾が飾られる。



「可愛い」って声を聞くたびに誇らしげな気分になる。



私とさっちゃんが店番をするのは午後からだから、午前中に他のクラスを回る約束をしていた。



クレープはクラス全員がローテンションを組んで作ることになっている。



だから、毎日生地の焼き方の練習をしていた。



私は何度練習してもうまく焼けなくて、デコレーション担当。



さっちゃんが焼いた生地にトッピングをするだけ。



自分の不器用さに驚いた。



料理は作れるんだけどな……



「何組から回る?」



「私はどこでもいいよ」



「じゃあ適当に行こう」



私たちは食べ物を出しているクラスばかりを回って、お昼前にお腹いっぱいになっていた。



「ウチらは、後夜祭の相手も決まってないし、完璧に色気より食い気だね」



「確かに~。こんなんで大丈夫?」



「ウチらの魅力がわからない奴が多すぎ」



「アハハ~」



「魅力のわからない男共はもうほっとこう」



「さっちゃん!!」



「んっ?」



「もうそろそろ、交代時間じゃない?」



「ホントだ~紗枝ちゃん、ダッシュ!!」



ダッシュと言われても、人が多すぎて走れるスペースがない。



なんとか人混みをすり抜けて、教室へと辿り着いた。



「ギリギリセーフ!!」



「ホントだね」



教室に着いたのは交代時間の5分前。



手作りエプロンをつけて、私達は交代をした。



お昼の時間帯ということもあって、クレープを買いに来る人たちは少なかった。



「暇だねぇ~」とさっちゃんとダレていた時、教室に岬君が入ってきた。



後ろには背の小さい女の子がくっついている。



「クレープ一つ」



「岬甘いの嫌いじゃなかった?」



私達の前にやってきた岬君にさっちゃんが返事をする。



「コイツの」



「へぇ~」



この子は岬君の何なんだろう?



私の心臓は段々と早くなっていく。