7月になると、殆どの部活動は休みとなり、学校祭の準備が始められた。



その中でも、サッカー部は別で顧問の先生以外に監督がついているため、学校祭くらいじゃ休みにはならないって岬君が友達に話しているのが聞こえてきた。



私のクラスの出し物はクレープ屋さん。



放課後は居残りをして、準備に追われる日々。



私の担当は暖簾作り。



さっちゃんと一緒にピンクの布に刺繍をしながら、可愛い暖簾を作ることにした。



部活が終わると、岬君は練習着のまま学校祭の準備を手伝った。



ドロドロになった練習着に、汗で濡れた髪。



自分から岬君と距離をとったのに、側にいれた何日間よりも今は岬君の姿が愛おしい。



教室の中で岬君の声を聞くと、耳を済ませ、低くて太い声に聞き入ってしまう。



いつものように、春樹君とじゃれあいながら笑う顔を見ると、胸がトキめく。



廊下で女の子と話をしているのを見ると、息が苦しくなるくらい、胸が締め付けられた。



離れてわかったんだ。



輝いていた君の側にいたくて、始まった気持ちだったけど、側にいた何日間で私は君に恋をした。



離れてから君の事、沢山知った気がした。



離れて始めて、知りたいと思ったのかもしれない。



あの時の私は君の名前すら知らないで、付き合っていた。



好きな人の名前を知らないなんて……私、バカみたい。



岬 英雅(ミサキ ヒデマサ)。



私の好きな人。



私の初恋の人。



私が手放した大切な人。



今になって、岬君のすべてに気持ちが乱れる。


声も仕草も笑顔も何もかも……岬君のすべてに私の胸は焦げてしまいそうなくらい熱くなった。



でも、今更岬君に声をかけることなんて出来ない。



臆病な私の気持ちが、選んだことだから。



今はこんなにも岬君が好きだってわかるのに。



こんなにも岬君を手に入れたくてたまらないのに。