翌朝は、昨日の雨が嘘のような晴天で、いつものように自転車で登校できた。



自転車置き場で岬君の自転車を見つけ、昨日のことを思い出し、少しだけ胸が締め付けられる。



「おはよう。何にやけてんの?」



「にやけてなんかないよ」



「ふーん。その感じじゃ帰りは楽しかったみたいだね」



「うん」



さっちゃんに昨日のことを聞いてもらいたくて、夢中で話した。



「うん、うん」と話を聞きながら、教室に先に入ったさっちゃんの顔が固まる。



「どうしたの?」



教室に入ると、私の目に黒板の文字が飛び込んできた。



岬と原田が雨の中のラブラブ下校。と書かれていて、2人の相合傘の絵が描かれている。



クラス全員の視線を感じる……



由香ちゃんの睨みつける顔付きも、紀子ちゃんの泣き顔も……



いやっ!!そう思った瞬間、私の足は走り出していた。



教室を飛び出し、学校を出ても走り続けた。



無我夢中で現実から逃げ出すために走りつづけ、私は家の近くの公園まで来ていた。



こんなに走ったの久しぶり……息が切れてその場に座り込む。



その途端、沢山の涙が溢れてきた。



クラスの視線を思い出すたびに寒気がする。



昨日の幸せな時間を汚されたみたいで悲しい。



私は自分の体を抱きかかえるように、うずくまった。



暫くすると「原田!!」と私を呼ぶ声が遠くから聞こえた。



「大丈夫か?」



「岬君……」



「俺が先に教室に行っていれば消せたのに。悪い」



「…………」



「今、春樹達が消してくれてるから大丈夫。帰ろう」



手を差し伸べてくれる岬君に私は首を横に振った。



きっとこれからクラスのみんなから話題の的となる。



あの時のように……



そして次第にあることないこと沢山の噂話が飛び交うんだ。



私の大切なものがきっと奪われていってしまう。



そんなこともう耐えられない。



もしかしたら、岬君にあのこと知られてしまうかもしれない。



それだけは嫌。



「私、岬君と一緒に帰りたくない」



「なんで?」



「一緒に帰ったら、また変な目で……」



「わかった」



岬君の一言があまりにも冷たい声で、私は再び泣き崩れた。