自転車置き場に自転車を停めて校舎の中へと入る。
美術室の扉を開けると、そこには誰もいない。
ガランと静まりかえった教室の中に私の足音が響く。
いつもの席に座り、グランドに目をやるとサッカー部が練習している。
必死でボールを追いかける姿に目を奪われる。
どれくらいこうしていたのかわからない。
ただ、太陽が照り付けるグランドに胸を弾ませながら、汗が光る背中を目で追っていた。
きっと何時間だって見ていられる。
夢に向かっている人たち。
夢の中にいる人たち。
そんな彼らは私には眩しくて仕方なかった。
グラウンドの様子を見れば見るほど、昔のことを思い出して涙が出そうになる。
でも、視線を逸らすことが出来なくて、涙がこぼれ落ちそうになった時、ガラガラと美術室のドアが開いた。
振り向くとそこには岬君が立っている。
「あっ、おはよう」
「何してんの?」
「展覧会近いから、さっちゃんいるかなと思ったんだけど、いなかった」
「そう」
「岬君はどうしてここに?」
「原田らしき人が見えたから……泣いてる気がして」
「えっ?」
「違うならいいんだ」
グラウンドからこの教室が見えたとしたって、涙を確認できるような距離ではない。
それなのに……
どうして岬君には私の涙が確認できたのだろう?
「あの……昨日は……」
昨日のこと謝りたくて話しかけたのに、行っちゃった……
聞こえていたはず。
岬君の耳に私の声は届いていたはず。
それなのに、岬君は行ってしまった。
無視されたことが悲しかった。
イチゴ飴を渡したときのような、笑顔はもう見せてくれないんだと思うと辛かった。
今まで辛い事は色々とあったけど、私の涙は流れなかった。
それなのに、どうしてこんなことでこんなにも涙が止まらないんだろう。
もう一度、話がしたい。
生き生きとした瞳で話す岬君の顔をもう一度みたい。
私の失った物、沢山持っている岬君と、もっともっと話したかったのに……


