「……ん」
太陽の光で目が覚めた。布団から身を起こし、昨日の事を思い出していた。

私は早苗。魔法使いだ。私は姉を守るために"身代わり"をしている。容姿が姉にそっくりなため、その辺をふらつくだけで姉と間違われる。
皆が、姉を狙うのは姉がこの町にとって重要な人物だからだ。
私は戦いの後、春香という人と出会った。そして、その人の家に泊めてもらうことになった。
『アレ?春香の家に泊めてもらってんのって、霞じゃなかったっけ?』と、思った人……正解。
私は春香達の前ではそう名乗った。"霞"というのは姉の名前で、本名は早苗だ。
名前を隠すのには訳がある。

戦った相手に負けても偽物だとバレないようにするため、だから、どんなに優しい人でも、完全に信用できると分かるまでは、本名を教えちゃいけない。優しくしているだけで本心では何か企んでいるかもしれないから。

…………と母親が昔言っていたからだ。
春香達にありがたみを感じていないわけでは無い。一人だった見ず知らずの私を家に迎え入れてくれたのだから。"ありがとう"の一言じゃ足りないぐらい感謝している。