私達は、川原から10分ぐらいの所にある家に足を運んだ。私と彼女は家に向かう間、一言も口をきかなかった。
「ただいまー」
そういって、私は家の扉を開けた。
家の中からは母親の明るい声が聞こえてきた。
「おかえり…誰?その子?友達?」
「…え、あぁ。この子、行くあてが無いらしくてさ、しばらく家に泊めてあげられないかな?」
少女はペコリと頭を下げた。
緊張している彼女に母親は優しく声をかけた。
「頭を上げて。えっと…名前、は」
そういえば私も名前を知らない。
「か、霞です……」
「霞ちゃん!これからよろしくね。」
どうやら母親は少女が同居することを許してくれたらしい。
彼女の顔がパァっと明るくなった。
「ありがとうございますっ‼︎」
と言った。
「えっと、お姉さんの名前まだ聞いてませんでしたね。」
そうだった。私の名前を言うの忘れてた。
「春香です。よろしく。」
「…春香。こちらこそよろしく。」
こうして、魔法使い霞と私の新しい暮らしが始まったのだった。