母の甲高い声。

「何も知らないと思うか?何にも知らない顔だけの者を受付に置くお前の神経…ああ、2年目だと言った方は、お前の第二秘書で愛人だったな。」

「親父!」

ざわつく会場。

今日は特に会社の社員が多い。

口々に話し出す周りの人達。

おじいちゃんは父の声も聞かず、こんどは方言の抜けたおばあちゃんが続けて話す。

「ちなみに、美子(みこ)さんも公認なんでしょう?まぁ、山崎と同棲しているんだから、そちらも公認かしら?娘を小学校高学年からほったらかし…ああ、小さい頃からシッター任せだったわね…。好き勝手に生きてきて、娘を一度殺しておきながら、よくのうのうと生きてられるわね。」

「お母様!」

ヒステリックな母の顔は、怒りしかない。

程々呆れる。

「お前みたいな奴に会社を渡すんじゃなかったわ。ワシの代で終わらせておくか、お前の弟に継いでもらうべきだった。バカみたいな仲良し夫婦を演じず、不倫するくらいなら別れて付き合え。お前達みたいな親で、威音が可哀想だ。死にかけた娘に歩み寄ろうともしない…拒絶されて当然な親が、とうとう親の愛を諦めた娘に、自分達もさっさと諦める…そんな愛情のない社長と弁護士が、他人の人生背負えるか!」

おじいちゃん…。

泣いちゃダメだ。

私はこんな親の事では、もう泣かない。

泣いたりしない。