驚きつつ、挨拶する山崎さん。

この人は父の第一秘書で、おじいちゃんが社長の時に第二秘書だった人だ。

「山崎、たくさんの会社関係者が来るパーティーの受付に、顔だけで選んだ…経験の浅い新人と変わらん者のみを置くな。失礼があったらどうする。決めたのはお前か?」

「はっ、すみません!社長のご判断でして…。」

冷や汗をダラダラかきながら、かなり焦っている彼が不憫にも思えたけれど。

常識よね。

まぁ、おじいちゃんも周りを気にして、声のトーンを下げてるからいつもより迫力はない。

なので、山崎さんもこれ以上顔面蒼白にはならないだろう。

「バカ夫婦は揃ってるか?」

おじいちゃんは中に案内されながら、そう聞いている。

私とおばあちゃんはそのあとに続く。

「社長と奥様はご挨拶をお二人でされております。」

「そうか。仮面夫婦の演技は天下一品だからな。早く離婚すればいいものを。お前もそう思うだろう?」

山崎さんは黙って冷や汗を流し続ける。

父と母はにこやかに笑って、お客様と話している。

おじいちゃん、このまままさかの突撃?

私達三人に気がついた二人。

びっくりして固まってるわ。

「久しぶりだな、挨拶はすんだか?」

「会長?!」

父の意識が先に戻ってきた。

「おい、信(しん)!お前がこの会社の社長であることが、ワシは恥ずかしいぞ。娘の事も幸せにできんやつが、会社の社員の事を本気で考えられるか?!嫁もろくな嫁じゃない腹黒弁護士だしな。いい加減、仮面夫婦はやめて離婚せい。」

「なっ、お父様?!」