「威音っ!」

突然引かれる私の腕。

講義を終え、大学の門を出た瞬間捕まった。

まだ夕方なんですが。

この人、仕事大丈夫なのかな?

私は腕を渾身の力で振りほどき、目の前にいる神威を睨む。

『触らないでください。』

「話をしよう?」

『イヤです。私の両親そっくりなあなたとは、もう会いません。でも、勘違いしないでください。私が拒絶したんじゃありません。あなたから私が捨てられたんです。』

「威音…。待って。違うから。」

すがるような顔を向けてくる神威を、私は冷静に見ながら。

『違わないです。それに私、これから人と会う約束があるんです。遅れるので失礼します。』

そのまま後ろを振り返ることなく歩いた。

もう、交わることはない私達の日常。

すごくすごく好きだった。

でも…もう無理なの。

この先、愛情じゃない色々な気持ちが混ざり混ざっている神威の隣に、私は純粋な好きの気持ちではいられない。

ずっと傍にいたかったな…。