人をおんぶするなんてどれくらいぶりだろうか。
一歩一歩ゆっくりと進んでいくが、男の子が目を覚ます気配は感じられない。
本当に大丈夫だろうかと不安になってくるけれど、背中に感じる熱い体温と心臓の音がその不安を少し薄れさせてくれている。
見るからに熱中症だと思うから、とりあえずお店に連れ帰って叔母ちゃんに相談して酷いようだったら医者を呼ぼう。
私の両肩口からぶらりとぶら下がっている男の子の腕は、思ってたよりも太く骨ばっていていくら細くても男の子なんだと感心する。
血管が所々浮き出ている腕は陽が当たったからか、赤くなっている。
いつも見ている男の子はあれだけ陽を浴びているのに色が白いから、日焼けしないタイプの人間なんだろうか。
…今日も空は青く、海も青い。
そんな当たり前の、どうでも良いくだらない事で頭をいっぱいにしていないと、首筋や頰に触れる男の子の髪が擽ったくて歩くことに集中できない。
