風の便りから



赤くなっているだろう頰は、もともと暑さで赤くなっていたはずだから不審に思われないだろう。



いつもは憎らしい真夏の暑さに今この時だけ感謝しつつ、台所に立って布巾を澄野くんへと渡す。





「…私が洗い物するから、澄野くんはその布巾で私が洗ったものを拭くのお願い出来るかな?」



「あ、…はい。分かりました」




少し遅れて澄野くんが了承してくれたのを確認してから、蛇口を捻り水を出す。




勢い良く流れ出る水に触れると井戸水だからか、凄く冷たくて気持ちが良い。





こんなに水が冷たいならビニールプールで遊ぶのも良いかな、なんて考えも一瞬で消え去る。


目の前に大きな海があるのにビニールプールを所持している家庭は無さそうだ。






洗ったものを澄野くんへ渡すたびに、指先と指先が軽く触れて何度も洗い物を落としそうになるのを堪える為に、心の中で島のお爺ちゃんお婆ちゃんの間で流行っている演歌を熱唱する。





大丈夫。まだ大丈夫。そう言い聞かせながら。