風の便りから




澄野くんの額に浮かび上がっている大きな汗の粒に目がいく。



扇風機も付いていない室内だから相当暑さは感じられて、私も汗が次から次に浮かび上がってくる。





「澄野くん、先にお店に戻ってて。私もこれ洗い終わったら行くから」


「……今日は子供達に教える勉強は無いので、小春さんのこと手伝わせて下さい」





少し黙ってこちらを向いたと思えば、真っ直ぐこちらに視線を向け発せられた言葉についつい笑顔がこぼれる。





澄野くんは常に人のことを思いやっている気がする。疲れないのだろうか、私だったら澄野くんみたいに周りを見ていたらきっと疲れてしまう。






心臓が耳の横にあるみたいに、蝉の鳴き声なんか聞こえなくなるくらい心臓の音がダイレクトに聞こえてる。




認めてしまったらもう逃げ道が無くなってしまうと、落ち着いて自分に言い聞かせる。




大丈夫。認めるな。まだ大丈夫。



脳裏に浮かぶ言葉を振り払うようにして何度もそう言い聞かせ、一生懸命口端を引き上げて笑顔を作ってみせる。




「ありがとう、じゃあ手伝ってもらおうかな」




腕捲りをして大きく息を吐き出し、澄野くんの二の腕をポンポンと軽く叩いてから背中を向ける。