風の便りから



玄関の扉を開けて家の中へ入れば、室内にこもった熱気を肌に感じて更に汗が頰や額に滲む。

…外よりも暑いかもしれない。



両手がふさがっているから、鍵を開けたままにしておいて良かった。




島に来たばかりの頃、鍵をかけない叔母ちゃんに驚いて何故なのか尋ねると、島の人達の事をみんな信用しているから生まれてからずっと鍵なんてかけた事が無いと言っていた。





他の人も鍵をかけているのか、いないのかは分からないけど恐らく大半の人が叔母ちゃんと同じ様に開けたままなんじゃないだろうか。





「お邪魔します」





背後から聞こえた声にふと振り返ると、澄野くんは綺麗に靴を揃えて家に上がってくる。





いつも自分が寝起きして過ごしている家に澄野くんが居るのが何だか不思議で、それでいてどこか擽ったさを感じてしまう。





「暑かったでしょ、ごめんね。運んでくれてありがとう」


「少しの距離なんで、このくらい全然大丈夫です」




澄野くんは首を振って笑っている。…どうしたら、こんなに謙虚になれるのだろうか。




もう少し偉そうにしてても良いんじゃないかと思ってはみたけど、偉そうにしている澄野くんはもう澄野くんではないような気がする。