風の便りから



お互い笑いながら少し会話を交わしたところで、準備を終えた澄野くんが椅子からゆっくりと立ち上がる。




「じゃあ、…そろそろ俺も失礼します」


「そうだね、いつの間にか外もだいぶ暗くなってるし」




本音を言うともう少し話していたかったけど、時間も時間だしまた明日会えると自分に言い聞かせて澄野くんと並んでお店の出入り口へ向かう。



外も子供達を見送った時の空と比べるとだいぶ暗くなってるから、これ以上暗くなって返すとご家族も心配するはず。




「じゃあ、また明日。気を付けて帰ってねー」


「はい、また明日」



子供達を見送った時と同じように手を振り、澄野くんを見送る。


澄野くんは男の子だからか、歩く速度が早くて前に送って行った事のある方角へとズンズンと進んでいく。




薄暗く遠い場所からでも、澄野くんの左手の甲にこれでもかというくらい大きく書かれた " クエンさん " の文字が見える。




澄野くんはラムネ作りに使うクエン酸を持って来る係に任命されて、忘れないようにと小学生達に書かれていた。




クエン酸と書きたかったんだろうけど、酸の漢字が多分分からなかったのか "クエンさん" と書かれていて、人の名前みたいでなんだか面白い。