風の便りから


俯いていた顔を上げた澄野くんは何かを決意したような表情で、私の方へ視線を向けてくる。



「ラムネって確か、クエン酸とか重曹とかそういうやつで出来ましたよね…?」




やっぱり澄野くんは頭が良いのだろう。


思い出そうとしてももう何年も前の事で材料なんてはっきりと思い出せないけど、確か澄野くんの言った材料と後少し何かを足せば簡単に出来た気がする。




「自由研究、ラムネにしないか提案してみます」

「うん。子供達も喜ぶんじゃないかな?」




ダンボールや牛乳パックで何かを作ったりするのも喜びそうだけど、実験みたいに何かを作って食べるっていうのも小さい子は好きだと思う。




アイスやシャーベットなんかでも良いんだろうけど、この気温だとすぐに食べないと溶けてしまうから、家にも持ち帰れて家族にも食べてもらえるラムネの方が良いはずだ。




納得した澄野くんはそのまま先程まで座っていた椅子へと腰を下ろし、真っ直ぐ背筋が伸びた綺麗な姿勢のまま窓の外の海へと視線を向けている。




『海と空、いつもどっちを見てるの?』



疑問をそう口にしようとしたけど、簡単に聞いて良いようなものではない気がして言葉を飲み込み黙って澄野くんの横顔を眺める事にした。