男の子の姿が窓の枠で見えなくなるまで目で追い、見えなくなった所で目を離し先ほどまで男の子が座っていた防波堤へと視線を戻す。
ここは日本の九州の本土から少し離れた島で、坂ノ島という島だ。
大島と呼べるほど大きくもなくすごく小さい訳でもなく敢えて言うのであれば、中くらいの島。
叔母ちゃん曰く、住民のほとんどの人がお互いを見れば誰か分かるらしい。
私は半年前くらいにここに越して来て、親戚の叔母ちゃんの家でお世話になっている。
私は知らないにしろ、叔母ちゃんも知らない子は珍しい。
「…あの子も、最近引っ越して来たのかな」
「そうやねえ。…そうかもしれんねえ」
小さなこの島では、数人に聞けばすぐにどこの子か分かるだろう。
それを聞かないという事は、叔母ちゃんの心遣いなのかもしれない。
人には聞かれたくないこと知られたくない事が誰にでも、ひとつくらいあるはずだ。
私にも、叔母ちゃんにも
あの黒髪の男の子にも。きっと誰にでも。
だから、勝手に探るようなことはしたくないのだろう。