お客さんが来なくて暇だからお店のカウンターに立ったまま上半身を屈め、行儀悪く肘をつく。

窓の外の青い空と青い海には黒髪がよく映える。だからかは分からないが、無意識に視線を向けてしまう自分がいる。


これじゃあ、叔母ちゃんの事をとやかく言えない。



写真を撮るわけでも絵を描くわけでもなく、ただ座っているだけの男の子は、海か空を眺めるのが好きなんだろうか。



もしかすると、景色を眺めているわけでもなく眼を閉じてセミの鳴き声や波の音に耳を澄ましているのかもしれない。





「あ、…」



頬杖をついたまま暫くの間眺めていると、男の子は防波堤から軽々と降り、いつもの方向に歩みを進めている。


多分、歩いて行く方向に自宅があるのだろう。




暑い炎天下の中。陽射しのせいで熱持っているであろうコンクリートの防波堤の上にしばらく居たにも関わらず、黒髪の隙間からチラリと見えた男の子の横顔はいつものように落ち着いた表情をしていた。




怠けている私だったらこの炎天下の中、1分でも外に居たら氷のように溶けてしまいそうだ。