島には狭い道なんかを合わせれば道が沢山あり、分岐路なんかが多いから澄野くんに道を尋ねながら慎重に暗い道路を車で進んで行く。
坂ノ島という名前の通り、坂も多い。
「…あ、この辺で良いです」
昼間に澄野くんが倒れていた所から、少し進んだ所でそう声をかけられゆっくりブレーキを踏む。
世間話でもしようかと、話題を探っていた所だったのに残念だ。
「ここから近いの?…ほんとに大丈夫?」
「はい、もう本当ここからすぐなので大丈夫です。」
そう言われてしまえば、もう引き止める理由もないから何も言えない。
それにしても予想以上に近くて少し驚いたけど、歩いて帰るには少し距離があるからやっぱり車で送って正解だったと自分の判断を褒める。
「…小春さん。今日はありがとうございました」
名前を呼ばれ顔を上げると、苦笑いのような笑顔の澄野くんが視界に映る。
すみませんばかり言っていた澄野くんからありがとうと言われ、胸がキュッと締め付けられるような感覚に戸惑ってしまう。
母性本能というやつだろうか。
