風の便りから


「…澄野くん」



すみのくん。
珍しい名字だから咄嗟に口にしてしまった。



すると、たまたまなのだろうけれど私の声が聞こえたように男の子の腕が微かに揺れ、薄っすらと瞼が開き男の子と視線がぶつかる。



「あ、…えっと…、澄野…くん?」

「…?…はい、澄野です」



澄野くんは少し目を丸くしてゆっくり頷き、喉が渇いているのか掠れた声で答えてくれる。



まだ状況が飲み込めてないみたいで、寝そべったまま目線だけ動かして周りを確認している。



「あのね、道で倒れてたから勝手に運ばせてもらったの」

「…え…、」




澄野くんは驚いたようにして体を勢いよく起こそうとしたが、どうやらまだ身体がしんどいらしく、すぐによろけてソファへと逆戻りしてしまった。


澄野くんが寝転がっているソファは見るからに年期の入ったソファだから、澄野くんが倒れ込んだ瞬間にギシッと少し嫌な音が響く。