青いリラの花が咲く六月、私はおうちの裏に生えた白樺の木にもたれかかって居眠りをしていたの。暖かい陽の光がポカポカと目に突き刺さるせいで、白い部屋に閉じ込められる夢を見たわ。だって私は白い太陽と白い木に挟まれたんだから、私も規則にしたがって白くならないといけないでしょ?きっとそうよ。
「それはどうしてだい?」
フクロウの姿をした身長2mぐらいの男の人が私に問いかけてきたから、驚いて後ろの木に頭をぶつけちゃった。
「白と白の間が必ずしも白であるとは限らない。白と赤が順番交代に並んでいる可能性だって否定できないだろう?でもそれを証明するためには、ほら、あそこに咲いてる赤い薔薇と白い薔薇を使うんだ。さあ、薔薇を。薔薇を!」
私は立ち上がって、言われるがままに赤と白の薔薇の花をいくつか摘んできて地面に並べた。そうしないと尖がった茶色いブーツが今にも私の顔に飛んできそうだったから。
「はははは。白と白の間が白であると証明するためには、三つの薔薇じゃ足りないんだ。もしも四つ目が白ならば白、赤ならば赤だ。白で統一されているのか、白と赤が交互に並んでいるのか、それは四つ目の薔薇が教えてくれることだよ。」
フクロウ男はそう言うけれど、私は納得できなかったの。
「ねえ、フクロウ男さん。どうして白と白の間が白じゃいけないの?それに色だって赤かどうかもわからないし、もしかすると五つ目もあるかもしれないわ。」
私がまだ話をしているのにフクロウ男はホーホーと笑い始めて、勢いよく、ゆっくりと屈んだ。私の顔と同じぐらい大きな目玉が、私の目の前にやってきた。
「色は別に問題じゃない。0と1の違いだよ。そして君の言う通り可能性は無限にある。まるで写真のようだ。写真は流れ行く時間を泥棒するだろう?でもその盗難品がどこかの誰かに渡った時、その誰かは盗難品がどういう経路を辿って自分の元へ来たか知る術がない。」
私は困惑しながらも考えた。
「その写真がどこで撮られたのか泥棒に質問すればいいだけじゃない。」
フクロウ男はまたホーホーと笑い、並んだ薔薇の花を踏み潰した。
「泥棒は質問に答えてくれない。なんせ泥棒だからね。黙秘権があるんだよ。つまり君が何をどう考えようと自由であり、この世界は小さなチキンのトマトカレーで泳ぐ雷の音の妖精が生み出したものだと主張しても構わないんだ。だから白と白の間は必ず白になるなんていう君の意見は間違ってるのだよ。わかるかい?脳みそちゃん。」
そう言うとフクロウ男は勝ち誇った顔をして、空へ飛んで行ったわ。すぐに戻ってきたけど。
「君は無限の世界に閉じ込められたのだ。どこまでも広がる言葉の草原。いつまでも終わらない連想ゲームの海。つまり君は文章の即興演奏に捕まったのだ。」