涼空はさっさと学校へ行く準備をして、玄関に向かう。

「親父。俺もう行くから。」

そして涼空は靴を履き、父の返事も待たず、家を出た。

家はなんだか居心地が悪い。かといって学校も同じようなものだが。

涼空は重たい足を一歩ずつ動かした。

一一あっ…。桜…。

今は春。

頭上に桜が舞っているのに気づき、そう言えば春だったと、思わず足を止める。

まだ四月で流石に満開ではないが、とても綺麗だ。

側には小川が流れていて、覗いてみると、桜の花びらが流れていくのが見えた。

春風が桜と小川と涼空の間を優しく抜ける。

しばらく春に浸っていたが、涼空は自然と今日は始業式だったことを思い出し、我に返ると再び歩き出した。

今日から涼空は高校三年生。

特に胸をときめかせることもなく、ただただ学校へと向った。