この気持ちに名前を



休憩時間になった瞬間に私の席を囲むのはクラスの皆。

「 犬威さん綺麗な髪してるね! 」だとか「 入院中寂しくなかった? 」だったり「これからたくさん話そうね 」とか。

とにかくいろんな質問から始まっていろんな事を喋りまくる。

その間に私はと言えば「 えっと…あの… 」ぐらいしか言葉が出なかった。

元々誰かとお喋りするのは得意じゃない。

「 こらこら、お前ら…結が困ってるだろーが!質問は一個ずつしてやれってーの!

でもまあ、確かにお前の髪って綺麗だよな 」

おかしそうに笑いながら私を庇ってくれるのは勿論のこと、お隣の席の洸くんだ。

そうしてまじまじと私の髪を見詰めてくる。

—— トクン

と、小さく胸が音を立てた気がした。

「 あ…うん。お母さんが私の髪を好きだって言ってくれたから染めてもないし切ってもいないよ 」

私が小さい頃にお母さんは病気で亡くなってしまってから、お父さんが男手ひとつで育ててくれた。

お母さんの顔はちゃんと覚えてないけど、私のこの黒くて長い髪が好きだと言ってくれたのは覚えてる。

だから私はこの髪、大好きだしお手入れも少なからず怠ったりしてない。

とは言え、腰まであるこの髪を洗ったり乾かしたりするのはやっぱり少し大変。

「 へ〜、そうなんだな。 お前に似合ってるよ 」

「あ、おいおい洸〜!もしかして犬威ちゃん狙ってんのかぁ〜? 」