重く感じる教室の扉を開ければ、皆の視線が一斉に私へと注がれる。

そんなに見ないで。

何も珍しい事なんて、何一つないのに。

「 … おはよう御座います、初めまして。犬威 結 です。一年間よろしくお願いします 」

できる限り手短に挨拶を終えた私へと贈られるのは皆の視線と乾いた拍手の嵐。

「 皆も知ってると思うけど、犬威さんは入学式当日に不運にも事故にあって今日が初登校になります。

ちゃんと仲良くしてあげるのよ!
そうそう、犬威さん。あなたの席は窓際の一番奥の席なの。

隣は学級委員でもある水澄くんだから安心して! 」

やっぱり誰よりもテンションの高い先生が私の席を案内してくれる。

そのまま何も言わずに自分の席に座って何事も無かったかのように教材を机の中へ仕舞う私に学級委員の男の子、水澄くんが話しかけてきた。

校則違反じゃないかってくらいに染めた髪は綺麗なミルクティー色をしていて、所々ハネている。
それに、スポーツをしているのか程よく焼けた肌に笑うと少し見える真っ白な八重歯。

一言で表すなら犬みたいな子。

「 おはよう、犬威。初めましてだな!俺は水澄 洸だから気軽に洸って呼んで?

俺も結って呼ぶからさ! 」

—— ああ。
ここにもまた一人、テンションの高い人が居た。

「 … うん、ありがとう。よろしくね 」