私にだけ聞こえるように呟く先生に勿論私の顔は引きつった笑みを隠せずにいて。
昨日の優しく手当してくれた人がまさか、こんな二重人格教師だったとは知らなかったし知りたくもなかった…。
こんな姿の先生見たら皆ショックで倒れちゃうよ…。
「 あーん、もう!悠ちゃんが歴史担任するなら私も取れば良かったぁ! 」
廊下を歩いてれば鳴り止まない黄色い歓声。
その声に先生は笑ったり手を振ったり丸でアイドル気分だ。
「 残念でしたね、僕も君に歴史を教えてあげたかったですよ 」
…王子様みたいな笑顔で何言ってるんだろう…ほんっと私の時と態度が違う。
「 さっさと戻れチビ犬 」
小さく呟くその声に「 言われなくても戻ります!」と半ばムキになって言い返したのは言うまでもない。
…なんなの、あの先生。私な何か恨みでも持ってるの!?
犬威って苗字だからってチビ犬呼ばわりしなくてもいいじゃない…。
皆騙されてる…あの王子様スマイルに。
そこからの私はといえば機嫌が悪くて梢枝ちゃんに心配されたけど大丈夫だと言い張った。
…他の人にこの事を言わないのは二人だけの秘密みたいで嬉しいから。
——これじゃあ、私が橘花先生を好きみたいじゃない…?
違う、そんな事ない。
少し弱味を握った気分でいれるだけ…!
それよりも今は洸の事心配だなぁ…。
毎日私を心配してくれて勉強も教えてくれて元気が取り柄みたいだったのに風邪なんて。
私のせいで無理させちゃったのかも…。

