「 こーら。ちゃんと橘花先生って呼びましょうね、並樹(ナミキ)さん。
ちなみに僕に彼女はいません独身です 」
…梢枝ちゃんの苗字って並樹なんだ、今知っちゃった。
ちゃっかり質問にもちゃんと答えてくれてるし…掴み所のない先生だなぁ、ほんと。
「 へー?モテそうやのに彼女おらんのや。
こりゃあウチらの学校でモテモテになるんちゃうか 」
なんて皆で笑いながらあっという間にHRが終わってしまった。
あの後からいろんな質問会になって、それに全て答えてくれた橘花先生は"優しくて若い格好いい担任"だと私達のクラスでは感じ取ってる。
先生が持つのは私達のクラス担任ともう一つは選択科目の歴史だそうだ。
…その科目を取ってるのは私と梢枝ちゃん、洸も一緒だった。
「 あの…っ、橘花先生…今日は洸、水澄くんお休みですか 」
HRから一限の終わりまでまだ来てない洸が心配になって廊下を歩く先生の背中に向かって声をかけた。
「 水澄なら風邪で休みだ。心配なら看病にでも行ってやれ 」
………
………え?
………あれっ?
聞き間違い、かな…朝の時と口調も声のトーンも少し…ううん、全然違う…。
「 … 橘花、せんせ… 」
「 昨日会ってんだから今更直す必要もねェだろうが馬鹿か 」
私が最後まで言い終わる前に続けて面倒臭そうに呟いたその後ろ姿に慌てて追いかける。
どこで生徒が見てるか分からないのに、
とは口が裂けても言えない。
「 …二重人格教師だ 」
「 あ?なんか言ったか犬っころ 」
「 なっ、何も言ってません!犬っこ…!? 」
訂正。
この教師、二重人格最低野郎かもしれない。

