「 結、おはようさん。そういえば今日から天音センセー産休でしばらく休むみたいやで 」

朝のHRが始まる少し前に梢枝ちゃんと喋ってると不意にそんな話を聞かされる。

「 えっ…天音先生って妊娠してたんだ… 」

あんまりお腹が出てなかったし、妊娠したばっかりなのかな…でも、産休って事は臨時の先生が来る訳だし

…誰なんだろう、怖い先生じゃなきゃ良いな。

「 まあ、そのセンセでこのクラスの雰囲気が壊れん事祈っとくかね 」

梢枝ちゃんはそう言って手をヒラヒラと振りながら自分の席に戻っていった。

「 ほら皆さん早く席についてください 」

それとほぼ同時に教室の扉が開いて外から気だるそうな声の男の人が入ってきた。

その声と共に騒がしかった教室が静まり返って皆が席に座り始める。

私もボーッと窓の外を見ながらHRが終わるのを待つ。

隣の席の洸はまだ来てなかった。

「 えー…皆も知ってると思いますが天音先生が産休を取られたので臨時では有りますが

僕が一年間だけこのクラスの担当を受け持つ事になりました 橘花 悠 です。

数年前まで違う高校の教師をしてましたがココには来たばかりなので皆さんに色々と尋ねる事も多いかと思いますが よろしくお願いします。 」

教師にしては珍しく丁寧な挨拶をしてから橘花先生はチョークを持って黒板に自分の名前を書き始めた。

机に腕をついてチラリと横目で盗み見た瞬間に私は慌てて椅子から立ち上がった。


——ガシャン!!