言葉に甘えて男の人が座る隣へ椅子を持って行けば大人しく腰を下ろす。

私が座るのを確認してから彼は席を立って勝手に棚から救急箱を取り出した。

突き指した私の指を優しく持ち上げて
まるで割れ物でも扱うみたいに優しく湿布と包帯を巻いてくれた。

慣れてるのか、保険医並みに手つきが早い。

「 まあ、これはあくまで一時的な手当にしか過ぎないから悪化するようであれば自分で病院に行くように。

それじゃ、僕はこれで失礼するね 」

それだけ言い残して彼はカツカツと靴の音を響かせながら保健室から出ていった。

名前も聞けなかったし、お礼もちゃんと出来てない…。

ここにいるってことは先生、だと思うんだけど…また会えるかな?

手当してもらった指先をながめながら私は自然と微笑みを浮かべていた。





「 —— 楽しませてくれよな 」







誰かが外からこっそりと私達を見て、そう呟いていたとも知らずに。