「 声でけーよ、結。

その様子じゃ忘れてたなー?
安心しろよ、抜き打ちテストは最後の六限にあるらしいから時間ならまだまだあるだろ 」

ガックリうなだれる私とは裏腹に余裕の表情を浮かべる洸くん。

さすが学級委員なだけある…。

きっと洸くんの中じゃ、今回の抜き打ちテストなんて余裕のよっちゃんなんだろう。

「 おー、ユイー

次の時間体育やで!はよ着替えんと 」

のんびりした梢枝ちゃんの声が聞こえて私は我に返った。

つ、次が私の苦手な体育だったなんて…。

鞄を机に置いて梢枝ちゃんと一緒に更衣室に向かってパパッと着替える。

確かあれだよね…六月にある球技大会の練習だとかで小さい頃皆が絶対遊んだであろうドッジボール。

体育の時間になるとその大会のために男女で別れてドッジボールの練習をする。

ああ…
球技が苦手な私にとって最初の地獄が…。

正反対な梢枝ちゃんはと言えば楽しそうに目を輝かせて取り組んでる。

運動神経、よさそうだし何より彼女自身がスポーツとか得意そうだ。

「 —— よし、私も頑張ろう! 」

と、意気込んだのはいいけど私は開始早々にボールを当てられ受け方が悪かったのか突き指という形で

ドッジボールの地獄から逃れられた。

骨に異常は見られないけど念のためだと体育担当の先生が保健室にって。

「 はぁ… 」

情けないため息を吐きながら私は教えてもらった保健室まで一人で歩く。

授業中の校舎は静かで風の音、鳥の鳴き声、遠くから聞こえる運動場で体育をしてる生徒の声だけが鮮明に耳に入ってくる。

この時間、嫌いじゃないかも。

「 し、失礼しまーす… 」

カラカラと扉を横に開いて遠慮気味に声をかけるも誰からの返事もなく。

もしかして先生いないのかな…。

「 あー…木戸(キド)先生なら出張中ですよ 」

一歩足を踏み入れた時に奥の方から男の人の低い声が聞こえて進めた足が無意識に止まる。

生徒?先生?

誰かわからない…けど、保健室の先生である木戸先生がいないと言われればどうしようもない。

湿布だけもらって帰ろうかな…。


「 突き指、したので湿布を…っ 」