ー15年前ー
「水より生まれし精霊よ…
 いまここに姿を示せ!」
そう唱えると、小さな水の精霊が姿を現した。
「スゴい!スゴい!」
「えへへー」
「私もやってみるー!」
そう言って呪文を唱えた。
「風より生まれし精霊よ…
 いまここに姿を示せ!」
しかし、精霊は姿を現さなかった。
「…うぅ…」
「きっ…きっとまぐれだよ。次はできるよ!」
「…ほんとぉ?」
「うん!ほんと!」
「…無理だよ…」
「うん、才能ちがうしね…」
「そんなことない!」
「だって、父さんも母さんも言ってたもん。月仲は最強だって」
「おじ様もおば様もそんなこと言う人じゃない。」
「でも、うちも言ってたよ。」
「才能の違いじゃなくて、努力の違い!」
「そうかな…」
「そうだよ!慎も洸もオリガも楓も私もみんな同じだよ!」
そう笑っていうこの娘は誰よりも悲しい存在だった。
この娘を動かしているものに名を与えるなら、人々の願い・夢ー。そんなところだ。
この少女の名は月仲未来。
光の森と呼ばれる国の姫君にあたる人だ。
「ねぇーみく?」
「なあに?楓?」
「もうそろそろ帰ろ?」
「…そうだね。」
「じゃあまた明日。」
「うん、ばいばい。」
そう言うと未来以外の子供たちはそれぞれの家に向かって帰った。
未来は近くにあった石に座り、迎えを待った。
「……速く迎えに来ないかな…」
そう小さく呟いたときだった。
「姫様、お迎えにあがりました。」
未来の目の前に執事が現れた。
「…遅い迎えですね。もう少し迅速にお願いします、アーサー。」
「申し訳ありません。」
「帰りましょう、お腹もすきました。」
「では手をー」
アーサーは未来に向かって手をさしのべた。
未来はその手をとった。
「おかえりなさいませ、姫様。」
手をとった瞬間に城に着いていた。
未来は執事とメイド達をみていった。
「ただいま。」
そう言うと未来は部屋に向かった。
扉を閉め、ベットに倒れこんだ。
「月仲は特別か…」
慎たちと話していたことを思い出していた。
確かに月仲はこの国を治めている一族であり、この国の守護を司っている。
しかし、小さな未来は他の子達とあまり変わらない存在だった。
ただ、未来にとってこの家は居にくい場所でしかなかった。
未来はベットから降り、服を着替えた。
そして、部屋を出た。