「…で、見つけて帰ってきたと?」
少年と彩矢は、一度退いて報告をしていた。
だが、報告を聞いていた男は少年に問いただしていた。
「ああ…」
少年は少し目をそらして言った。
男はナイフを少年に向かって投げた。
少年はそれを片手で受け取った。
「お前ともあろうものが、なにやってんだ?
わかってるのか?
あの娘は俺達が使うのにふさわしいのは?」
「…わかってる…」
「わかってて逃がしたのか?
だったらおまえ、どう責任を取るつもりだ?
王はひどく荒れているぞ?」
「次に万全の状態で…」
「次はない。」
「なに…?」
「もう一度だけ言うぞ、次はない。
王はすぐにでも欲しかったんだよ。
あの娘の力が、あの娘の膨大な魔力と霊力が。」
「なんでだ?」
「わからないのかよ?なら教えてやる。
あの方はな…」
『もういい、下がれザクラ。
翡翠、すぐに俺のところまで来い!』
「わかりました、我らが王よ…。」
そう言うと、声は消えた。
それを確認したザクラは言った。
「上手くいえよ、おまえはあの娘を連れてくるための道具のようなものだからな。
しかしおまえ、翡翠って呼ばれてるのか?」
「ああ、元々の名をあいつに知られたくないと俺がいった。」
「なるほどな…」
それだけを言うと、翡翠と呼ばれた少年は姿を消した。
ザクラはそれを確認してポツリと言った。
「あの娘に知られたくないか…。
まぁ、仕方ないかもな。
だがかわいそうだな…、あいつもあの娘も。」