楽しい時間は過ぎるのも早い…レストランの庭のイルミネーションをのんびり見ていたらふうせんを飛ばしてしまった女の子がベソかいてるのに出くわした。ふうせんは少し高い枝にひっかかっている。有森はジャンプしてそれをとろうとした。
 「邪魔だからちょっと預かっててよ。」
 「うん。私のバックに入れて置くわね。」
 有森は、財布を遥に預けて何度か目のジャンプでふうせんを取り、女の子にわたした。その時の有森の笑顔は遥をくぎづけにした。
遥は有森と離れたくないような気持ちになる。帰りの車では運転する有森の横顔をじっと見ていた。 「何?」
「え?」
「急に、大人しくなって…疲れたのかい?」
「ううん。」
「あ、解った、お腹いっぱいになったんで眠くなったとか?」
「からかわないでよ。…でも、今日は、楽しかった。」
「…よかった。」
「私…」
「もう、誘わないよ。」 「え?」
「遥さんが、誘ってくれる?」
「…じゃあ、明日。明日も…」
「明日?」
「嘘よ。」
「嘘なんだ?…残念」
「嘘じゃない、本気」
有森は笑った。
「…なんで笑うのよぉ」 「遥さんが可愛いから」 「…ば、ばか」
「冗談。本気にした?」 「からかわないでよぉ」 「…着いたよ。」
「…うん。」
 まだ8時半じゃない!早過ぎる…そう思ったが、遥は声に出して言う事ができなかった。
「遥さん、おやすみ」
「おやすみなさい。」
「どうしたの?」
「…帰りの運転…気をつけてね」
不意に有森が遥の唇にKissをした。
「…怒った?」
「ううん」
「明日、連絡待ってるよ。じゃ。」
有森は行ってしまった。 何で有森ってこんなにあっさりしてるのだろう?
遥の胸は、こんなにもバクバクしてるのに。
はぁ…ため息がもれた。